アルミ電解用陽極ペースト
アルミニウムの工業生産において、陽極ペーストは非常に重要です。
アルミニウムは極めて広範に使用されている非鉄金属ですが、その背景には次のような顕著な利点があります。
- 比強度が高く、スチールのわずか半分の重量で同じ強度を持ちます。航空機や路上車等軽量さが求められる用途では特に優れた性質です。
- 電気伝導性、熱伝導性に優れており、電子電気分野では高く評価されています。
- 優れた作業性と共に、酸素、光、その他環境因子に対する絶対的なバリア特性があり、包装や容器材料として理想的な材料です。アルミニウムは完全に再利用可能なため、ほぼ閉じた材料サイクルをより一層可能にします。
アルミ電解用陽極ペーストの加工プロセス
アルミニウムは、生物圏では酸素、シリコンについで3番目に多く存在する元素で、地球の地殻では最もありふれた金属ですが、母材金属として存在し単体では見つかりません。アルミニウムは19世紀初めに初めて精練され、1886年に融解塩電解法がC.M.ホールとP.L.エルーそれぞれによってほぼ同時に開発されました。多くの改良を経て、その製法が今なお標準的な工業製造法となっています。これは主に、直流電源をつないで起こさせた酸化還元反応で、カーボンはボーキサイトから得られる酸化アルミニウムの還元剤として使用されます。連続的に供給される炭素陽極は、酸素と結合してCOおよびCO2のガスを生成することで消耗していきますが、還元されたアルミニウムは陰極に堆積し、回収されます。アルミニウム1トンを生産するのに、炭素陽極は約500 kg消耗されます。
融解塩電解法で使用される純粋な炭素電極は、特殊なコークスのみから製造されます。石油コークスは、大量に手に入るため工業的に使用されています。粉砕した石油コークスに、結合剤としてコールタールピッチが添加されます。このピッチは、コールタールの蒸留時に出る残留物で、常温で固体であり容易に粉砕されます。加熱すると、分子量によっては95℃~120℃で溶融し、粘性の小さい液体になります。適切な成分にした電極用陽極ペーストは、特有の加工ラインで製造されます。投入した石油コークスをまず破砕し、丁寧に乾燥し、粉砕し、ふるい分け、各種のバンカーで中間保管するため粒度に応じて厳密に分別します。
特定粒度に調整した粉砕コークスは、規定配合に従って正確に計量し、予備加熱し、加熱したブッス・ニーダーで結合剤と共に混合されます。液状のコールタールピッチ結合剤はブッス・ニーダーの加工チャンバーに直接注入されます。これにより液体がコークス粒子の穴を覆い、貫通することで、粒子同士が結合したペースト状の集合物ができます。ニーダーから排出されるペーストは、用途によって、振動プレスでブロックに(プリベーク陽極)、あるいはゼーダーベルグ式電解炉用陽極としてブリケット状に成形されます。
電気分解法は完全に連続的なため、陽極の供給は決して妨げられてはいけません。したがってプラントを確実に操業していくには、実証された技術が欠かせません。
アルミ電解用陽極ペーストの混練要件
1950年代以降、ブッス・ニーダーは、陽極ペーストの混練装置として最高の選択肢となってきました。当初4 t/hだった生産能力は、現在60 t/hまで進歩し、将来の90 t/hという需要に対しても容易に扱えます。加工プロセス技術は、より高い直流電源(> 500 kA)へのニーズと原料品質の劣化に合わせて進化してきましたが、ここ数年はこれらの要求ペースをさらに上回って進歩しています。

他の代替機種に対するブッス・ニーダーの長優位点まとめると次のようになります。適切に調整された混練プロセスにより、どの陽極粒子も一定の強度と滞留時間で連続的に混合されます。穏やかな混合により、常に一定の陽極ペースト粒度分布が維持できます。これにより、物理特性に優れ、電気分解中の消費効率が最大の陽極ブロックを得ることができます
現在利用可能なブッス・ニーダーは3種類あり、そのサイズは生産能力20~90 t/hをカバーし、将来の需要にも対応できます。ブッス・ニーダーは、通常数十年に達する使用寿命の最後まで確実に運転し、補修部品やサービスも継続して利用可能です。その製品性能とサービスは既に導入した数百のプラント・設備で、見事に実証されています。
陽極ペースト混練システムのための典型的な工場内レイアウト
